長谷川式認知症スケールとは?検査項目ごとの意味と、認知症が心配なときの相談先
「最近、もの忘れが増えた気がする」
「同じ話を何度も繰り返している」
「家族の様子が以前と少し違う」
こうした変化に気づいたとき、多くの方が心配されるのが認知症です。認知症は、単なる加齢によるもの忘れとは異なり、記憶力や判断力、理解力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出てくる状態です。
認知症が疑われる場合、医療機関では問診や診察に加えて、認知機能の状態を確認するための検査を行うことがあります。その代表的な検査のひとつが、長谷川式認知症スケールです。
よく介護に関わる方からも認知症が心配なのでは、「長谷川式検査」受けてみては?と言われるほどの認知症診療の中で良く使用される検査になります。

長谷川式認知症スケールとは
長谷川式認知症スケールは、正式には改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)と呼ばれる検査です。日本で広く用いられている認知機能検査のひとつで、認知症の可能性があるかどうかを確認するためのスクリーニング検査として使われます。
【こちら】が日本老年医学会のHPにあります長谷川式認知症スケールです。
HDS-Rは、年齢、時間の見当識、場所の見当識、単語の記憶、計算、数字の逆唱、物品の記憶、言葉の流暢性など、9項目から構成される30点満点の検査です。国立長寿医療研究センターも、HDS-Rは9項目からなる30点満点の認知機能検査で、一般的に20点以下は認知症が疑われる目安と説明しています。
ただし、長谷川式の点数だけで認知症と診断するわけではありません。臨床所見やその他の検査を組み合わせて
検査結果は、体調、緊張、不安、注意力、集中力などの影響を受けることがあります。そのため、認知症の診断では、問診、診察、生活状況、ご家族からの情報、必要に応じた画像検査などを総合して判断することが大切です。
長谷川式で確認する9つの項目と、その意図
長谷川式認知症スケールでは、単に点数の高い低いで「もの忘れがあるかどうか」だけを確認するわけではありません。各項目それぞれを見ることで記憶力、日時や場所の把握、注意力、計算力、言葉を思い出す力などさまざまな角度から認知機能を確認します。HDS-Rの設問は、見当識、3単語の記銘と遅延再生、計算、数字の逆唱、物品の記銘と即時再生、語想起に関する9項目で構成されます。
1. 年齢の確認
最初に確認するのは、ご本人の年齢です。
年齢は、自分自身に関する基本的な情報です。普段の会話でもよく使う情報であり、多くの場合、長く保たれやすい記憶のひとつです。
この項目の意図は、ご本人が自分に関する基本的な情報を把握できているかを確認することです。また、質問に対して落ち着いて答えられるか、会話のやり取りが成り立つかを見る意味もあります。
年齢を間違えたからといって、すぐに認知症と判断されるわけではありません。しかし、本人に関する基本的な情報があいまいになっている場合は、認知機能の低下を考えるきっかけになります。
2. 時間の見当識
次に、今日が何年、何月、何日、何曜日かなど、時間に関する認識を確認します。
これを時間の見当識といいます。見当識とは、自分が今どのような状況にいるのかを把握する力のことです。時間の見当識が低下すると、「今日は何日かわからない」「曜日を間違える」「季節感がずれる」といった変化が見られることがあります。
この項目の意図は、時間の流れを把握できているかを確認することです。
日付や曜日の把握は、予定の管理、薬を飲むタイミング、通院日、ゴミ出しの日、家族との約束など、日常生活に深く関係しています。時間の見当識が低下している場合、生活の中で予定を守ることが難しくなったり、服薬管理に支障が出たりすることがあります。
3. 場所の見当識
場所の見当識では、今いる場所を正しく理解できているかを確認します。
たとえば、自宅にいるのか、病院にいるのか、施設にいるのかなど、現在の環境を把握できているかを見る項目です。
この項目の意図は、自分が今どこにいるのか、周囲の状況を理解できているかを確認することです。
場所の見当識が低下すると、慣れた場所で迷う、外出先で自宅への帰り道がわからなくなる、病院に来ていることを理解しにくい、といった問題につながることがあります。認知症の方では、時間の把握だけでなく、場所の把握にも変化が出ることがあります。
4. 単語の記銘
単語の記銘では、いくつかの言葉を聞いて、その場で覚えてもらいます。
これは、あとで再び思い出してもらうための準備にもなります。新しい情報を聞き取り、それを頭の中に一時的に入れられるかを確認する項目です。
この項目の意図は、新しい情報を覚える力が保たれているかを確認することです。
認知症、特にアルツハイマー型認知症では、昔のことは比較的よく覚えていても、新しく聞いたことや少し前に起こったことを忘れやすくなることがあります。単語の記銘は、こうした「新しい情報を取り込む力」を見るために重要な項目です。
5. 計算
計算の項目では、簡単な引き算などを行います。
計算と聞くと、学力を調べる検査のように感じる方もいるかもしれませんが、長谷川式で確認するのは難しい数学の力ではありません。
この項目の意図は、注意を保ちながら、順序立てて考える力があるかを確認することです。
計算には、数字を理解する力、注意を持続する力、途中の結果を覚えておく力、次の手順へ進む力が関係します。これは、買い物でお金を払う、家計を管理する、薬の数を確認する、といった日常生活にも関わる能力です。
ただし、計算が苦手な方や緊張しやすい方では、認知症でなくても点数が下がることがあります。そのため、計算の結果だけで判断するのではなく、全体の様子や他の項目とあわせて評価します。
6. 数字の逆唱
数字の逆唱とは、聞いた数字を逆の順番で言ってもらう課題です。
たとえば、いくつかの数字を聞き、それを頭の中で保持しながら順番を入れ替えて答える必要があります。
この項目の意図は、注意力や集中力、作業記憶の状態を確認することです。
作業記憶とは、情報を一時的に頭の中に置きながら処理する力のことです。日常生活では、電話番号を聞いてメモする、料理の手順を覚えながら進める、会話の内容を理解しながら返答する、といった場面で使われます。
数字の逆唱が難しい場合、単なる記憶力だけでなく、注意力や集中力の低下が関係していることもあります。
7. 単語の遅延再生
検査の前半で覚えてもらった単語を、少し時間を置いてから再び思い出してもらいます。
これを遅延再生といいます。すぐに答えるのではなく、一定の時間が経ったあとに思い出せるかを見るため、記憶力を確認するうえで重要な項目です。
この項目の意図は、少し前に覚えた情報を保持し、あとから思い出せるかを確認することです。
認知症では、「聞いた直後は覚えていても、しばらくすると忘れてしまう」という症状が見られることがあります。特に、日常生活で「さっき言ったことを忘れる」「約束を忘れる」「同じ質問を繰り返す」といった変化がある場合、このような記憶の保持や再生の力が関係していることがあります。
長谷川式では、ヒントを出すことで思い出せるかも評価に含まれます。国立長寿医療研究センターも、HDS-Rでは遅延再生においてヒントによる手がかり再生が部分点として与えられる点を説明しています。
8. 物品の記銘と即時再生
物品の記銘では、複数の物を見てもらい、それを覚えてもらいます。その後、どのような物があったかを思い出してもらいます。
言葉だけではなく、実際の物を見て記憶する課題です。
この項目の意図は、目で見た情報を記憶し、思い出す力を確認することです。
日常生活では、財布をどこに置いたか、鍵をどこに置いたか、買い物で何を見たかなど、視覚的な情報を覚える場面が多くあります。この項目では、言葉の記憶だけでなく、見たものを覚える力も確認します。
「物をよくなくす」「置いた場所を思い出せない」といった困りごとがある場合、こうした記憶の働きが関係していることがあります。
9. 言葉の流暢性
最後に、決められた条件に沿って、できるだけ多くの言葉を挙げてもらう課題があります。たとえば、あるカテゴリーに当てはまる言葉を思いつく限り答えるような課題です。
この項目では、単に言葉を知っているかどうかだけでなく、頭の中から言葉を探し出し、整理して答える力を確認します。
この項目の意図は、言葉を思い出す力、考えを整理する力、発想の柔軟性を確認することです。
認知症では、言いたい言葉が出てこない、会話の途中で詰まる、物の名前が思い出せない、といった変化が見られることがあります。また、言葉をたくさん挙げる課題では、記憶力だけでなく、注意力や遂行機能も関係します。
遂行機能とは、目的に向かって考えを整理し、順序立てて行動する力のことです。この力が低下すると、料理、買い物、片付け、予定管理など、複数の手順が必要な行動が難しくなることがあります。
長谷川式の点数だけで認知症は決まりません
長谷川式認知症スケールは、認知機能の状態を大まかに確認するための検査です。30点満点で評価され、一般的には20点以下の場合に認知症が疑われる目安とされますが、点数だけで診断が決まるわけではありません。
たとえば、検査当日の体調が悪い、緊張している、睡眠不足である、気分が落ち込んでいる、耳が聞こえにくい、質問がうまく聞き取れないといった場合、実際の認知機能よりも低い点数になることがあります。
一方で、検査の点数が比較的保たれていても、日常生活の中で薬の飲み忘れが増えている、金銭管理が難しくなっている、火の消し忘れがある、外出時に迷うといった変化がある場合には、詳しい評価が必要になることもあります。
そのため、長谷川式は「認知症かどうかを一回で決める検査」ではなく、医師が状態を把握するための大切な手がかりのひとつと考えるとよいでしょう。
「年のせい」と決めつけず、早めの相談を
もの忘れが増えると、「年齢のせいだから仕方ない」と考えてしまう方も少なくありません。もちろん、加齢によって多少もの忘れが増えることはあります。
しかし、もの忘れの原因は認知症だけではありません。うつ病、睡眠障害、甲状腺機能低下症、ビタミン不足、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、薬の影響など、治療によって改善が期待できる原因が隠れていることもあります。別の記事【治療ができる認知症がある?Treatable dementiaについて】でも、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などは、原因を取り除くことで症状が改善することがあると案内しています。
特に、以下のような変化がある場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
- 同じ質問や同じ話を何度も繰り返す
- 約束や予定を忘れることが増えた
- 財布や鍵などをよく探すようになった
- 慣れた道で迷うことがある
- 薬の飲み忘れが増えた
- 料理や買い物、金銭管理が難しくなってきた
- 怒りっぽくなった、疑い深くなった
- 家族から「最近様子が変わった」と言われる
認知症は、早めに気づき、状態に合わせた対応を行うことが大切です。早期に相談することで、治療可能な原因を見つけたり、生活上の困りごとに対する支援につなげたりできる可能性があります。
もの忘れ・認知機能低下でお悩みの方は、てらすクリニックにっぽりへご相談ください
「最近もの忘れが増えた」
「同じ話を繰り返すようになった」
「日付や予定を間違えることが増えた」
「家事や仕事の段取りが難しくなってきた」
「年齢のせいなのか、認知症なのか不安」
このようなお悩みがある方は、てらすクリニックにっぽりへご相談ください。
認知機能の低下には、加齢やアルツハイマー型認知症だけでなく、うつ病、睡眠障害、薬の影響、甲状腺機能の異常、ビタミン不足、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など、さまざまな原因が関わることがあります。
当院では、心療内科・精神科・内科の視点から、こころとからだの両面を確認し、必要に応じて血液検査や認知機能の評価、専門医療機関との連携も含めて、今後の方針を一緒に考えていきます。
「認知症かもしれない」と不安を抱えたままにせず、まずは原因を確認することが大切です。
また、介護についてご懸念のある方はケアマネージャー資格を持つ医師も診療しています。
今後どうしたらいいのだろうかと医療・介護面でお困りの方お気軽にご相談ください。
当院は土日も診療しており、JR日暮里駅から徒歩30秒、WEB予約は24時間受付可能です。
沿線主要駅から日暮里駅までのアクセス目安
当院は日暮里駅から徒歩1分の場所にあり、JR常磐線・山手線・京浜東北線、京成線、日暮里・舎人ライナーをご利用の方にも通いやすい立地です。
北千住・松戸・柏方面、青砥・京成高砂方面など、沿線エリアからも無理なくご来院いただけます。
| 駅 | 日暮里駅までの目安 |
|---|---|
| 北千住駅 | 約6〜8分 |
| 松戸駅 | 約16分 |
| 柏駅 | 約25〜32分 |
| 南千住駅 | 約5分 |
| 青砥駅 | 約9〜14分 |
| 京成高砂駅 | 約12〜17分 |
通勤・通学の前後や、お仕事帰りにも立ち寄りやすく、継続的な通院にも便利です。
日暮里周辺にお住まいの方はもちろん、常磐線・京成線沿線にお住まいの方もお気軽にご相談ください。
※所要時間は目安です。時間帯・列車種別・運行状況により異なる場合があります。
監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニックなどで勤務
てらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)