治療ができる認知症がある?Treatable dementiaについて
治療ができる認知症(Treatable dementia)について
※全ての認知症が治せるという趣旨ではありませんのでご注意ください。
「最近もの忘れが増えた」
「会話の内容を忘れてしまう」
「家事や仕事の段取りがうまくいかない」
こうした変化があると、「年齢のせいかな」「認知症なら仕方ない」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、認知機能の低下にはさまざまな原因があります。認知症は一つの病名ではなく、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態を指します。原因となる病気には、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症など、複数の種類があります。
そして、その中には治療によって改善が期待できるもの、あるいは認知症のように見えて、実は別の治療可能な病気が原因となっているものがあります。
これを英語では Treatable dementia、日本語では「治療可能な認知症」「改善しうる認知症様症状」などと表現することがあります。
ただし、ここで大切なのは、すべての認知症が治るという意味ではないということです。アルツハイマー病など進行性の認知症もあります。一方で、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、薬剤の影響、うつ病などでは、治療や原因への対応によって認知機能の改善が見込めることがあります。
認知症の診断・治療で大切な要素の一つとしてこれらの改善が見込める可能性のある認知症を治療につなげることが大切です。
Treatable dementiaの代表的な原因
1. 正常圧水頭症
正常圧水頭症は、脳脊髄液の流れや吸収の異常により、脳室が拡大して起こる病気です。
特徴として、
歩きにくい・小刻み歩行になる・転びやすい
もの忘れや反応の遅さが目立つ
尿もれが増える
といった症状がみられることがあります。
特発性正常圧水頭症が疑われる場合には、頭部CTやMRI、タップテストなどで評価します。
特に頭部CTやMRIについては近隣医療機関とも連携し、検査をしていただき脳の状態について確認することもございます。
タップテストは、歩行障害・認知障害・排尿障害が改善するかを確認する検査で、診断やシャント手術の適応判断に用いられます。(当院ではなく脳神経外科や脳神経内科で行われます。)
2. 慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、頭をぶつけた後などに、脳を包む膜の下に血液がたまる病気です。
高齢の方では、軽い転倒や打撲でも起こることがあります。症状として、もの忘れ、ぼんやりする、歩行障害、片側の手足の動かしにくさ、頭痛などが出ることがあります。
こちらも症状や経過から疑い、主には頭部CT検査などにより確定診断に進みます。
頭部CT検査で異常が認められる場合は早急に脳神経外科を受診し手術加療が行えるかどうか専門的な見地からの診断が必要です。
特に転倒後、数か月経過してから徐々に症状が顕在化することもあり直後に大丈夫だったからと言って油断せずに注意深く経過を見ておかしな点があればすぐに受診することが必要です。
画像検査で発見され、状態によっては手術などで改善が期待できる場合があります。慢性硬膜下血腫は治療により改善しうる認知機能低下の代表的な例の一つです。
3. 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足すると、体の代謝が低下し、疲れやすい、寒がりになる、むくむ、気分が落ち込む、動作が遅くなるといった症状が出ることがあります。
その一部として、記憶力や集中力の低下が目立つこともあります。血液検査で確認でき、甲状腺ホルモンの補充などで改善が期待できる場合があります。
4. ビタミン欠乏症
ビタミンB1、B12、葉酸などの不足でも、認知機能低下や精神症状が起こることがあります。
日本神経学会の認知症疾患診療ガイドラインでは、ビタミンB1欠乏ではWernicke脳症、ビタミンB12欠乏では記憶障害や精神症状、葉酸欠乏でも同様の認知機能障害がみられることがあるとされています。特に胃がんやその他の治療で胃の一部もしくは全部を摘出した方や、アルコールを多飲している方などはリスクが高く問診から疑った場合には採血検査で追加をすることもあります。
偏食、、吸収障害、などが背景になることもあります。
5. 薬剤の影響
薬の影響で、眠気、注意力低下、記憶力低下、ふらつきなどが起こることがあります。
特に高齢の方では、睡眠薬、抗不安薬、一部の抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、複数の薬の併用などが影響することがあります。薬を自己判断で中止するのは危険ですが、医師が薬の内容を確認し、必要に応じて調整することで改善につながる場合があります。
6. うつ病・せん妄
うつ病では、意欲低下、集中力低下、思考の遅さが目立ち、「認知症のように見える」ことがあります。これを仮性認知症と呼ぶこともあります。
また、感染症、脱水、睡眠不足、薬剤、入院環境の変化などによって、急にぼんやりする、混乱する、話のつじつまが合わないといった「せん妄」が起こることもあります。
うつ病やせん妄は、認知症とは対応が異なります。これらは特にご年配の方が初めて元気がない、活気がない、落ち込んでいる様子だという様な場合に区別が必要で治療をしていく中ではっきりしていく事もしばしばです。当院の院長は東京都健康長寿医療センター(老年医学の専門病院)でも診療経験があり、高齢者の精神疾患にも精通しております。うつ病でも認知症でも適切なアドバイスを行いますのでどのような場合でもお気軽にご相談ください。
だからこそ、まずは診察と検査が大切です
認知機能が低下しているように見えても、その原因は一つとは限りません。
診察では、本人だけでなく家族からの情報、症状の経過、生活への影響、服薬状況、身体診察、神経診察、認知機能検査などを組み合わせて評価します。
必要に応じて、血液検査で甲状腺機能やビタミン不足を調べたり、頭部CT・MRIで正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、脳血管障害などを確認したりします。NICEの認知症診療ガイドラインでも、認知機能低下の評価では可逆的な原因を除外し、必要に応じて構造画像検査を行うことが推奨されています。
「年のせい」と決めつけないでください
もの忘れや認知機能低下があると、不安になるのは自然なことです。
しかし、
「どうせ認知症だから」
「もう治らないから」
と決めつけてしまうと、治療できる原因を見逃してしまう可能性があります。
認知症そのものを完全に元に戻すことが難しい場合でも、早く診断することで、治療、生活環境の調整、介護サービスの準備、ご家族のサポートにつなげることができます。
認知機能の低下に気づいたら、まずは医療機関でしっかり診察・検査を受け、原因を確認することが大切です。
まとめ
認知機能低下には、治療によって改善が期待できる原因が隠れていることがあります。
Treatable dementiaとは、「認知症が必ず治る」という意味ではありません。
しかし、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症、薬剤の影響、うつ病、せん妄など、適切な診断と治療によって改善しうる状態があります。
もの忘れや判断力の低下を感じたときは、諦めずに、まずは受診して原因を調べましょう。
早めの診断が、ご本人とご家族のこれからを守る第一歩になります
もの忘れ・認知機能低下でお悩みの方は、てらすクリニックにっぽりへご相談ください
「最近もの忘れが増えた」
「同じ話を繰り返すようになった」
「日付や予定を間違えることが増えた」
「家事や仕事の段取りが難しくなってきた」
「年齢のせいなのか、認知症なのか不安」
このようなお悩みがある方は、てらすクリニックにっぽりへご相談ください。
認知機能の低下には、加齢やアルツハイマー型認知症だけでなく、うつ病、睡眠障害、薬の影響、甲状腺機能の異常、ビタミン不足、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫など、さまざまな原因が関わることがあります。
当院では、心療内科・精神科・内科の視点から、こころとからだの両面を確認し、必要に応じて血液検査や認知機能の評価、専門医療機関との連携も含めて、今後の方針を一緒に考えていきます。
「認知症かもしれない」と不安を抱えたままにせず、まずは原因を確認することが大切です。
また、介護についてご懸念のある方はケアマネージャー資格を持つ医師も診療しています。
今後どうしたらいいのだろうかと医療・介護面でお困りの方お気軽にご相談ください。
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監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニック・産業医として勤務
当院の分院であるてらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)
産業医やケアマネジャーとしても働きつつ、働く皆様や高齢者のお力になりたいと考えています。