【認知症】MCI(軽度認知機能障害)とは?認知症とは何が違うの?どうすればいいの?受診目安のセルフチェック付き
もの忘れが気になり始めたとき、多くの方がこの間で揺れます。「病院に行くほどではない気がする。でも、もし何かあったら」——そんなとき知っておいていただきたいのが、MCI(軽度認知障害)という考え方です。
MCIは「健常」と「認知症」の中間にあたる状態で、この段階で気づくことには大きな意味があります。この記事では、MCIとは何か、加齢によるもの忘れや認知症との違い、セルフチェックの目安、そして受診するとどんなことがわかるのかを解説します。
MCI(軽度認知障害)とは?
MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)とは、もの忘れなどの認知機能の低下がみられるものの、日常生活はおおむね自立しており、認知症とは診断されない状態を指します。厚生労働省の説明を引用しますが、MCIは「もの忘れなどの軽度の認知機能障害が認められるが、日常生活は自立しているため、認知症とは診断されない状態」と説明されています。
イメージとしては、次のような位置づけです。
健常(年相応のもの忘れ) ─ MCI ─ 認知症
決して珍しい状態ではありません。厚生労働省研究班の調査(2024年公表)では、2022年時点でMCIの高齢者は約559万人、認知症の高齢者は約443万人と推計されており、あわせると65歳以上のおよそ3.6人に1人がいずれかに該当する計算になります。さらに2040年には、認知症約584万人・MCI約613万人になると見込まれています(認知症施策推進基本計画・令和6年12月)。
つまりMCIは、誰にでも起こりうる、ごく身近な状態です。「自分だけがおかしいのでは」と一人で抱え込む必要はありません。
「年のせいのもの忘れ」「MCI」「認知症」の違い
もの忘れといっても、その中身には違いがあります。よく挙げられる目安を表にまとめました。
| 加齢によるもの忘れ | MCI(軽度認知障害) | 認知症 | |
|---|---|---|---|
| 忘れ方 | 体験の一部を忘れる(夕食のメニューを思い出せない) | 最近の出来事が頭に残りにくく、忘れる頻度が明らかに増える | 体験そのものを忘れる(夕食を食べたこと自体を忘れる) |
| ヒントがあれば | 思い出せることが多い | 思い出せることもあれば、出てこないことも増える | ヒントがあっても思い出せないことが多い |
| もの忘れの自覚 | ある | あることが多い(本人が不安を感じやすい) | 乏しくなることがある |
| 日常生活 | 支障なし | おおむね自立(複雑な作業でミスが増えることも) | 支障が出る |
ただし、これはあくまで一般的な目安です。実際には境界は連続的で、ご自身やご家族の判断だけで見分けるのは簡単ではありません。「どちらか分からない」こと自体が、一度相談してみる十分な理由になります。
MCIのサイン|セルフチェックの目安
次のような変化が続いていないか、振り返ってみてください。
- 同じことを何度も聞く・話すと、家族や周囲から指摘されることが増えた
- 約束や予定をうっかり忘れることが、以前より明らかに増えた
- 物の置き場所が分からなくなり、探し物の時間が増えた
- 料理の段取りや家電・スマホの操作など、慣れた作業に手間取ることがある
- 最近の出来事(ニュースやドラマの内容)が頭に残りにくい
- 趣味や外出がおっくうになり、やめてしまったものがある
- お金の管理や書類の手続きで、ミスや戸惑いが増えた
- 本人よりも先に、家族のほうが「あれ?」と変化に気づいている
※このチェックは医学的な診断に代わるものではありません。当てはまる項目があっても、それだけでMCIや認知症と判断できるものではなく、逆に当てはまらなくても心配な変化があれば受診をおすすめします。あくまで「相談のきっかけ」としてご活用ください。
MCIから先は「一本道」ではありません|回復する例も報告されています
「MCI=いずれ必ず認知症になる」と思われがちですが、そうではありません。
報告により幅がありますが、MCIと判定された方のうち1年あたりおよそ5〜15%が認知症へ移行する一方で、14〜44%の方は正常な認知機能へ回復したとする報告もあります(日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」)。
また、先ほどの厚生労働省研究班の資料では、生活習慣病の管理の改善などにより、認知機能低下の進行が抑えられた可能性にも言及されています。
つまりMCIは、「進む」「とどまる」「戻る」のいずれの道もありうる段階です。だからこそ、この時期に自分の状態を知り、生活を整え、必要な治療につながることには意味があります。「調べるのが怖い」というお気持ちは自然なものですが、早く知ることは、選べる選択肢を増やすことでもあります。

早めに相談する意味|「治療で改善しうるもの忘れ」もあります
もの忘れの原因は、認知症だけではありません。なかには、適切な治療によって認知機能の改善が期待できる原因が隠れていることがあります。
- 甲状腺機能低下症やビタミン欠乏などの内科の病気 — 血液検査で手がかりが得られます
- 高齢者のうつ病 — 意欲や集中力の低下が、もの忘れのように見えることがあります(認知症との見分けが難しいケースもあります)
- 睡眠の問題 — 不眠や睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、日中の注意力・記憶力に影響することが知られています
- お薬の影響 — 複数のお薬の飲み合わせが、認知機能に影響する場合があります
- 慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症など — 専門医療機関での検査・治療の対象となる病気です
これらは「調べてみたら、認知症ではなかった」という結果につながることもある原因です。受診は、悪い知らせを聞きに行く場ではなく、原因を仕分けして、打てる手を確認する場とお考えください。
また近年は、アルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)や軽度の認知症を対象とした新しい治療薬(レカネマブ、ドナネマブ)も登場しています。これらの投与ができる医療機関には一定の要件があり、体制の整った専門医療機関で行われますが、対象となるのは早い段階(一定以上進行していない状態)の方です。適応の可能性を考えるうえでも、「気になった時点での相談」が出発点になります。
受診の流れ|もの忘れの外来では何をする?
「連れて行かれて、何をされるのか分からない」という不安は、受診をためらう大きな理由です。一般的な流れをご紹介します。
- 問診 — いつ頃から、どんな場面で困っているか、生活への影響、既往歴やお薬についてうかがいます。ご本人の言葉に加え、日頃の様子をご存じのご家族のお話も参考になりますので、可能な範囲でご同席ください。
- 認知機能検査 — 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSEなど、質問にお答えいただく形式の検査です。痛みを伴うものではありません。
- 血液検査など — 甲状腺機能をはじめ、内科的な原因がないかを確認します。
- 必要に応じた画像検査のご案内 — 頭部MRI・CTなどが必要と考えられる場合は、連携する医療機関をご案内します。
診察や検査は保険診療で受けられます。結果として「年相応の範囲でした」となれば、それは大きな安心材料です。何か見つかれば、早い段階から対応を始められます。どちらに転んでも、受診して損はありません。
MCIと言われたら|進行をゆるやかにするために取り組めること
MCIの段階でまず大切になるのは、生活習慣の見直しです。難聴、高血圧、糖尿病、喫煙、運動不足、社会的孤立、過度の飲酒などが、認知症発症と関連する「対処しうる要因」として挙げられています。これらへの取り組みが認知症のリスク低減と関連することが報告されており、次のような工夫が勧められています。
- 体を動かす — ウォーキングなどの有酸素運動を、無理のない範囲で習慣に
- 生活習慣病の治療を続ける — 高血圧・糖尿病などの管理は、脳の健康とも関わることが報告されています
- 睡眠を整える — 強いいびきや日中の眠気がある方は、睡眠時無呼吸症候群の評価も選択肢です
- 聞こえのケア — 聞こえづらさを放置せず、補聴器の相談も含めて対処する
- 人との交流・役割を保つ — 外出、会話、趣味の場を減らしすぎない
- バランスのよい食事、禁煙・節酒
「これをすれば認知症にならない」と言い切れる方法は、現時点ではありません。ただ、取り組む価値のあることは、はっきり分かってきています。そして、その多くは今日から始められます。
ご家族の方へ
もの忘れの変化は、ご本人よりも先にご家族が気づくことが少なくありません。心配のあまり「さっき言ったでしょ!」と強く指摘したり、記憶を試すような質問を重ねたりすると、ご本人の自尊心が傷つき、かえって受診から遠ざかってしまうことがあります。
受診を勧めるときは、「もの忘れを調べに行こう」よりも、「健康診断のつもりで、一度体の調子を診てもらおう」「眠れているかも心配だから」など、ご本人が受け入れやすい入り口を選ぶのがコツです。ご本人がどうしても受診を嫌がる場合の声のかけ方は、別の記事で詳しく解説しています。
まずはご家族だけで相談したいという場合の進め方については、お電話でお問い合わせください。また、荒川区にお住まいの方は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターでも、もの忘れに関する相談を受け付けています。
よくあるご質問
Q. MCIと診断されたら、必ず認知症になりますか? A. いいえ。報告により幅はありますが、1年あたりの認知症への移行はおよそ5〜15%とされ、一方で正常な認知機能へ回復した方も14〜44%いたとする報告があります(日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」)。経過には個人差があり、定期的に経過を診ていくことが大切です。
Q. 何科を受診すればよいですか? A. もの忘れのご相談は、精神科・心療内科、脳神経内科、医療機関の「もの忘れ外来」などで受け付けています。当院は心療内科・精神科・内科を標榜しており、もの忘れが気になる段階からのご相談が可能です。より精密な検査が必要な場合は、連携する医療機関をご案内します。
Q. 検査はつらくないですか? 費用はどれくらいかかりますか? A. 認知機能検査は質問にお答えいただく形式で、痛みはありません。血液検査を行う場合も通常の採血です。保険診療の対象で、費用は検査の内容によって異なりますので、受診時にご確認ください。
Q. まだ40〜50代ですが、もの忘れが気になります。 A. 働き盛りの世代のもの忘れは、ストレス・うつ状態・睡眠不足などが背景にあることも多く、年齢を問わずご相談いただけます。まれに若年性認知症(2022年時点で全国約3.6万人と推計)もあるため、気になる変化が続く場合は一度ご相談ください。
Q. MCIでも車の運転は続けられますか? A. 一律には判断できず、状態によって異なります。なお、75歳以上の方は運転免許更新時に認知機能検査を受ける制度があります。運転に不安を感じる場合は、ご家族や医師とご相談のうえ判断されることをおすすめします。
Q. MCIに効く薬はありますか? A. MCI全般に広く使われる保険適用のお薬は、現時点では限られています。アルツハイマー病によるMCIを対象とした新しい治療薬はありますが、投与には専門医療機関での精密な検査と体制が必要です。現在の中心は、生活習慣への取り組みと、もの忘れの原因となっている病気(甲状腺の病気、うつ、睡眠の問題など)への対応です。詳しくは診察のなかでご説明します。
まとめ
- MCI(軽度認知障害)は、もの忘れなどの認知機能低下はあるものの日常生活はおおむね自立している、健常と認知症の中間の状態です
- 2022年時点でMCIの高齢者は約559万人と推計され(厚生労働省研究班調査)、誰にでも起こりうる身近な状態です
- MCIから先は一本道ではなく、正常な認知機能へ回復した例も報告されています
- もの忘れの背景には、治療で改善しうる原因(甲状腺の病気、うつ、睡眠の問題など)が隠れていることもあります
- 「年のせいか、そうでないか」を自己判断するのは困難です。迷っている段階でのご相談が、選択肢をいちばん広く保ちます
「調べて何もなければ、それがいちばんの安心」——そんな気持ちで、どうぞお気軽にご相談ください。
日暮里駅から徒歩1分、WEB予約も可能です
てらすクリニックにっぽりは、JR日暮里駅から徒歩1分の場所にあります。心療内科・精神科・内科・睡眠障害内科を標榜しており、月・火・木・金は9:30〜13:00/14:30〜19:00、土・日は9:30〜13:15/14:00〜16:00、水曜・祝日は休診です。
「もの忘れが増えた気がする」「家族の様子が以前と違う」——そんなご心配がある方は、当院へご相談ください。ご本人のご受診はもちろん、ご家族が付き添ってのご来院も歓迎しています。
当院は内科も標榜しているため、高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理とあわせてご相談いただくことも可能です。生活習慣病の管理は、認知機能の面からも大切であることが報告されています。また、睡眠障害内科では、認知機能への影響が指摘される睡眠時無呼吸症候群のご相談にも対応しています。
当院は土日も開院しており、お仕事をされているご家族が付き添いやすい環境です。
当院は、JR常磐線・山手線・京浜東北線、京成線、日暮里・舎人ライナーをご利用の方にも通いやすい立地です。また、西日暮里駅からも徒歩圏内のため、西日暮里周辺にお住まいの方や、東京メトロ千代田線をご利用の方にもご来院いただきやすい場所にあります。
沿線主要駅から日暮里駅までのアクセス目安
| 駅 | 日暮里駅までの目安 |
|---|---|
| 西日暮里駅 | 約2分、徒歩でも約10分前後 |
| 北千住駅 | 約6〜8分 |
| 松戸駅 | 約16分 |
| 柏駅 | 約25〜32分 |
| 南千住駅 | 約5分 |
| 青砥駅 | 約9〜14分 |
| 京成高砂駅 | 約12〜17分 |
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監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニック・産業医として勤務
当院の分院であるてらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)
産業医やケアマネジャーとしても働きつつ、働く皆様や高齢者のお力になりたいと考えています。