【認知症】レカネマブの皮下注射製剤で治療はどう変わる?【物忘れ外来】
アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果のある薬として、報道も含めて注目された薬がレカネマブ、商品名レケンビ®です。
レカネマブは、これまでの認知症治療薬とは異なる作用を持つ薬として期待されてきました。一方で、その効果だけでなく、副作用、費用、治療を導入できる医療機関が限られていること、定期的な通院やMRI検査が必要になることなど、実際に治療を受けるうえでのハードルも指摘されてきました。
以前のブログ記事では、都内でレカネマブの初回導入が可能な医療機関についてまとめるとともに、レカネマブを希望する場合でも、いきなり大病院を受診するのではなく(治療対象外で無駄足に終わる可能性もある)、まずは近くの認知症診療に対応した医療機関で、現在の状態や治療適応を整理することが大切であるとお伝えしました。記事の中でも、レカネマブは対象となる方が限られ、投与施設を探すだけではなく、まず現在のもの忘れの原因や病期を評価することが重要だと書きました。(よければご一読下さい)
そのような中で、エーザイ株式会社から、レカネマブの皮下注射製剤について日本で承認申請を行ったという発表がありました。エーザイの発表によると、皮下注オートインジェクター製剤として承認申請が行われ、もし承認されれば、現在の点滴静注に加えて新たな投与選択肢となる可能性があります。
米国ではすでにレカネマブの皮下注射製剤「LEQEMBI IQLIK」が承認されています。ただし、米国で承認されているのは、18カ月の2週に1回の点滴治療後に行う、週1回の皮下維持投与としての使用です。おそらくは、日本でも動揺に初期治療が終了した後の維持治療としての役割になっていくのかなと思っています。
皮下注射になれば、通院の負担は軽くなる可能性があります
現在の点滴治療では、2週間に1回の通院、点滴の準備、投与中の観察などが必要になります。患者さんご本人だけでなく、ご家族や介護される方にとっても、通院の予定を組むことはかなりの負担になっていることは事実です。
皮下注射製剤が実際に使えるようになれば、点滴に比べて投与にかかる時間が少なくなる可能性があります。エーザイ社の発表では、皮下注射製剤により点滴静注で必要な医療プロセスが削減でき、治療の流れ全体を効率化することが期待されると説明されています。
ただし、ここで大切なのは、「皮下注射になれば、誰でも簡単に受けられる薬になる」という意味ではない、ということです。
レカネマブは、皮下注射になっても慎重な適応判断が必要です
レカネマブは、認知症であればどなたでも使える薬ではありません。
対象となるのは、アルツハイマー病による軽度認知障害、または軽度の認知症の段階の方です。また、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査などにより、アミロイドβ病理を示唆する所見が確認されている必要があります。
簡単に言えば進行を「遅らせる」ため、一定より進行している病状には使用しないということです。
添付文書でも、レカネマブは疾患の進行を完全に停止させたり、治癒させたりする薬ではないこと、アミロイドβ病理が確認されアルツハイマー病と診断された患者さんに使用すること、中等度以降のアルツハイマー病による認知症の方には投与開始しないことが示されています。
また、ARIA、アミロイド関連画像異常と呼ばれる副作用への注意も引き続き重要です。ARIAは、脳のむくみ、滲出液貯留、脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着、脳出血などとしてMRIで確認されることがあります。無症状のこともありますが、頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害などの症状が出ることもあります。
そのような副作用の判定のため定期的なMRIは皮下注射になっても推奨されるのだろうと考えています。
そのため、皮下注射製剤が登場したとしても、MRI検査、認知機能評価、副作用への対応体制、専門医療機関との連携が不要になるわけではないだろうと考えています。
今後、クリニックでの関わり方が広がる可能性があります
現時点では承認申請段階であり、どの医療機関で、どのような条件で、どの時期から使用できるのかは確定していません。保険上の扱い、施設要件、在宅投与の可否、病院とクリニックの役割分担なども、今後の承認内容やガイドラインの改訂を確認する必要があり注目していきたいと思います。
一方で、現在の最適使用推進ガイドラインでは、初回投与から6か月までは初回投与施設で対応することが示されていますが、6か月以降については、一定の要件を満たし、初回投与施設と連携がとれる施設で投与できる枠組みも示されています。
そのため、今後もし皮下注射製剤が承認され、制度上、専門病院で一定期間治療を継続した後に、状態が安定している方が連携クリニックで皮下注射へ切り替える、あるいはクリニックが継続治療や副作用確認の一部を担う、といった運用が認められるのであれば、認知症治療は変わっていくのではないかと思います。
当院でも、現時点で皮下注射製剤を実施できるという段階ではありませんが、今後の承認内容、施設要件、連携体制、保険上の取り扱いを確認しながら、患者さんとご家族にとって安全で継続しやすい形で関われるかどうかを、前向きに検討していきたいと考えています。
皮下注射が出ても、まず必要なのは「もの忘れの原因を整理すること」です
レカネマブを希望される方にとって大切なのは、「投与できる施設を探すこと」だけではありません。
まず、現在のもの忘れが本当にアルツハイマー病によるものなのか、軽度認知障害や軽度認知症の段階なのか、ほかの病気や薬の影響がないかを確認する必要があります。
もの忘れの原因には、アルツハイマー病だけでなく、脳血管障害、正常圧水頭症、うつ状態、睡眠障害、薬剤の影響、甲状腺疾患、ビタミン不足など、さまざまなものがあります。
皮下注射製剤が今後使えるようになったとしても、最初の入り口は変わりません。まずは、現在の症状、生活状況、ご家族からみた変化、服薬内容、既往歴、画像検査の必要性などを整理し、レカネマブの検討に進むべきかどうかを確認することが大切です。
てらすクリニックにっぽりで大切にしたいこと
てらすクリニックにっぽりでは、認知症が疑われる方の初期評価、生活状況の確認、ご家族からの聞き取り、必要に応じた近隣協力医療機関との連携によるCT・MRIなどの画像評価を行うことが可能です。
レカネマブの適応が検討される場合には、患者さんの状態を整理したうえで、適切な専門医療機関への相談・紹介を検討します。
今後、レカネマブの皮下注射製剤が承認され、病院と地域クリニックが連携しながら治療を継続できる体制が整っていくのであれば、当院としても、その流れに前向きに関わっていきたいと考えています。
ただし、レカネマブは「新しいから受けた方がよい薬」ではなく、対象となる方が限られ、副作用や通院負担、費用面も含めて慎重に検討すべき薬です。患者さんご本人とご家族が、本当に継続できる治療なのか、生活全体の中で無理がないのかを一緒に考えていくことが重要です。
「レカネマブを受けられるか知りたい」
「最近もの忘れが増えてきた」
「家族の認知症が心配だが、どこから相談すればよいかわからない」
このような場合は、いきなり大病院を受診する前に、まずは身近な認知症診療の窓口で相談することをおすすめします。てらすクリニックにっぽりは精神科・心療内科・内科(一般・睡眠障害)のクリニックとしてこころとからだの両面から認知症の診断・治療が可能であり「窓口」でありたいと考えています。認知症は精神的な症状も出ますが、脳機能の障害という意味では神経内科の病気でもあると言えます。
まずは現在の症状や状況について丁寧に話を聞き必要な検査、治療の選択肢、専門医療機関への紹介の要否を、一緒に整理していきます。
ケアマネジャー資格を持つ医師も在籍しており介護や訪問診療についても相談していただく事が可能です。
まとめ
レカネマブの皮下注射製剤は、今後の認知症診療において、通院負担や治療継続の面で新たな選択肢となる可能性があります。
一方で、レカネマブは、皮下注射になったとしても、対象となる方が限られ、MRI検査やARIAへの注意、専門医療機関との連携が必要な薬であることに変わりはありません。
てらすクリニックにっぽりでは、今後の制度やガイドラインの動向を確認しながら、地域のかかりつけ医として、認知症の初期評価、生活面の支援、専門医療機関への橋渡し、そして将来的に可能であれば治療継続のサポートまで、患者さんとご家族にとって無理のない形を検討していきます。
「本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。レカネマブ皮下注製剤の日本での承認状況、保険適用、施設要件、在宅投与やクリニックでの投与可否は今後変更される可能性があります。実際に治療を検討される際は、最新情報を確認し、主治医または専門医療機関にご相談ください。」
認知症が心配、物忘れなどがあるなどの症状などが気になる方、レカネマブの治療を受けられるのか相談してみたい方は荒川区内で物忘れ外来を行っております「てらすクリニックにっぽり」にお気軽にご受診下さい。
土日や平日夜も開院しております。ご家族様が付きそう際も仕事休みの日に安心して通院を継続できます。
JR日暮里駅から徒歩1分、WEB予約は24時間受付可能です。
沿線主要駅から日暮里駅までのアクセス目安
当院は日暮里駅から徒歩1分の場所にあり、JR常磐線・山手線・京浜東北線、京成線、日暮里・舎人ライナーをご利用の方にも通いやすい立地です。
また、西日暮里駅からも徒歩圏内のため、西日暮里周辺にお住まいの方や、東京メトロ千代田線をご利用の方にもご来院いただきやすい場所にあります。
| 駅 | 日暮里駅までの目安 |
|---|---|
| 西日暮里駅 | 約2分、徒歩でも約10分前後 |
| 北千住駅 | 約6〜8分 |
| 松戸駅 | 約16分 |
| 柏駅 | 約25〜32分 |
| 南千住駅 | 約5分 |
| 青砥駅 | 約9〜14分 |
| 京成高砂駅 | 約12〜17分 |
通勤・通学の前後や、お仕事帰りにも立ち寄りやすく、継続的な通院にも便利です。
※所要時間は目安です。時間帯・列車種別・運行状況により異なる場合があります。
監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニックなどで勤務
てらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)