PTSDだけではない広い意味での「トラウマ反応」
フラッシュバック・不安・適応障害として現れることもあります
「これはPTSDなのでしょうか」
「昔のことなのに、急に思い出して苦しくなるのはなぜでしょうか」
「命に関わるような出来事ではなかったのに、今でも身体が反応してしまいます」
診察の場では、このような相談を受けることがあります。
トラウマという言葉を聞くと、災害、事故、暴力、性的被害、命の危険を感じるような体験を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際、PTSDの診断で規程されるトラウマ体験は「破局的」と言ったりしますが、生死に関わる事象死亡、性的暴力などに関わる強い出来事が中心になります。
PTSDでは、体験の記憶が自分の意思とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢として繰り返されたり、不安や緊張が高まったりすることがあります。(侵入症状)
一方で、日常の臨床では、PTSDの診断基準をすべて満たしていなくても、「過去の出来事が今の生活に影響している」ケースが少なくありません。たとえば、強い叱責、いじめ、家庭内の不和、ハラスメント、突然の別れ、長期間の孤立、否定され続けた経験などが、その人にとって深い傷つきとして残ることがあります。
このような場合、医学的にはPTSDと診断されないこともあります。しかし、だからといって「問題がない」「治療の対象ではない」という意味ではありません。
狭い意味のトラウマと、広い意味のトラウマ
トラウマには、狭い意味と広い意味があります。
狭い意味のトラウマとは、PTSDの診断基準で扱われるような、生命の危険、重傷、性的暴力などに関わる出来事を指します。自分自身が体験した場合だけでなく、他人が巻き込まれる場面を目撃した場合、災害救援などで凄惨な出来事に繰り返し触れた場合なども想定されます。
PTSDでは、つらい記憶が突然よみがえる「侵入症状」、思い出させるもの・状況を避ける「回避症状」、気分や考え方の変化、過剰な警戒心や睡眠障害などがみられます。これらが1か月以上続き、強い苦痛や日常生活への支障がある場合に、PTSDと診断されることがあります。
一方、広い意味のトラウマとは、PTSDの定義には当てはまらないが「心や身体に残った傷つき体験」を含みます。
出来事そのものが客観的にどれほど大きかったかだけでなく、その人がどのように受け止めたか、その後の安心感、人間関係、自己肯定感、身体の緊張、睡眠、仕事や学校生活にどのような影響が残っているかが大切です。
たとえば、周囲からは「よくあること」「大したことではない」と言われた経験でも、本人にとっては、長く緊張や不安を引き起こすきっかけになることがあります。
「忘れたつもりだったのに、似た場面になると身体が固まる」
「特定の声のトーンや表情を見ると、急に昔の感覚に戻る」
「頭では今は安全だと分かっているのに、心臓がドキドキして逃げたくなる」
このような反応は、広い意味でのトラウマ反応として理解できることがあります。
PTSDではなくても、フラッシュバックのような反応は起こります
フラッシュバックという言葉は、PTSDの症状としてよく知られています。実際、PTSDでは、トラウマとなった出来事に関する苦痛な記憶が突然よみがえったり、当時に戻ったように感じたりすることがあります。
ただし、「フラッシュバックがある=必ずPTSD」とは限りません。
PTSDと診断されるには、出来事の性質、症状の種類、持続期間、生活への影響などを総合的に確認する必要があります。一方で、PTSDの診断基準をすべて満たさない場合でも、つらい記憶が急に浮かぶ、当時の感情がよみがえる、身体がその場にいるように反応する、といった体験は起こり得ます。
トラウマ後の反応として、不安、悲しみ、怒り、集中困難、睡眠の問題、その出来事を繰り返し考えてしまうことは起こり得ます。多くは時間とともに軽くなりますが、症状が改善しない場合や生活に支障が出る場合には、専門的な相談が役立つことがあります。
大切なのは、「PTSDという診断名がつくかどうか」だけで苦しさを判断しないことです。
診断名がつかなくても、本人が困っているなら相談の対象になります。
仕事に行けない、学校に行きづらい、人間関係を避けてしまう、眠れない、急に涙が出る、体調不良が続く、過去の場面が何度も浮かぶ。
こうした状態が続くときは、心と身体が「まだ安心できていない」と知らせているサインかもしれません。
広い意味のトラウマは、適応障害やうつ、不安症状として現れることもあります
トラウマ反応は、必ずしもPTSDという形だけで現れるわけではありません。
ストレスとなる出来事のあとに、気分の落ち込み、不安、涙もろさ、イライラ、集中力の低下、仕事や学校への行きづらさ、人間関係の回避などが出てくる場合、適応障害、現在の診断名では適応反応症と呼ばれる状態として整理されることがあります。適応反応症では、特定できるストレス因に対する反応として、感情面や行動面の症状がみられ、精神療法や薬物療法が一定の役割を果たす場合があります。
また、トラウマ体験のあとに、うつ状態、不安症状、パニックのような症状、不眠、身体症状、対人不信、過覚醒、解離のような反応がみられることもあります。トラウマ後の反応は、PTSDや急性ストレス障害の診断基準に当てはまらない症状として残ることもあり、気分や不安に関する症状を伴う場合もあります。
つまり、広い意味のトラウマは、次のような形で生活に影響することがあります。
「また同じことが起きるのでは」と常に身構える。
人の表情や言葉に過敏になる。
怒られているわけではないのに、責められているように感じる。
突然、昔の場面が浮かび、動けなくなる。
休日も疲れが抜けず、眠っても回復しない。
職場や学校など、特定の場所に近づくと動悸や吐き気が出る。
人間関係を避けるようになり、孤立してしまう。
このような状態は、「性格の問題」や「気にしすぎ」だけで片づけられるものではありません。背景に、過去のストレス体験、現在続いている負荷、睡眠不足、うつや不安、適応障害などが重なっていることがあります。
「思い出さないようにする」だけでは、かえって苦しくなることもあります
つらい記憶や感情を避けることは、自然な反応です。
思い出したくない。
話したくない。
近づきたくない。
考えたくない。
それは、心が自分を守ろうとしている反応でもあります。
しかし、避けることで一時的に楽になっても、生活の範囲が少しずつ狭くなってしまうことがあります。人に会えない、仕事に行けない、電車に乗れない、特定の場所を避ける、感情を感じないようにして過ごす。こうした状態が続くと、トラウマそのものだけでなく、生活の制限や孤立によってさらに苦しさが増してしまうことがあります。
治療では、無理に過去の出来事を話すことが目的ではありません。
まずは、今の生活で何が困っているのか、どのような場面で反応が強くなるのか、睡眠や食事、仕事、人間関係にどの程度影響しているのかを整理していきます。
「トラウマを掘り返す」のではなく、今の安全を取り戻す。
「忘れる」ことを目標にするのではなく、思い出しても今の生活が壊れない状態を目指す。
そのために、診断の整理、心理的な支援、環境調整、必要に応じた薬物療法などを組み合わせていくことがあります。
治療の対象になるのは、PTSDだけではありません
「PTSDではないと言われたから、相談してはいけないのでは」
「この程度で病院に行くのは大げさでは」
そう考えて、長く一人で抱えてしまう方もいます。
しかし、精神科・心療内科で扱うのはPTSDだけではありません。
適応障害、うつ病、不安症、不眠症、パニック症状、身体症状、対人関係のストレス、仕事や学校に行けない状態など、さまざまな困りごとが相談の対象になります。トラウマ体験が背景にある場合でも、現在の症状がどの診断に近いのか、何が生活を苦しくしているのかを整理することで、治療方針が立てやすくなります。
たとえば、眠れない状態が続いている場合には、まず睡眠を整えることが大切になることがあります。
不安や動悸が強い場合には、身体反応を落ち着ける方法を身につけたり、必要に応じて薬を使ったりすることがあります。
職場や学校のストレスが続いている場合には、休職、配置調整、通学・通勤の負荷軽減など、環境面の調整が必要になることもあります。
過去の記憶が繰り返し浮かぶ場合には、心理療法やカウンセリングを通じて、少しずつ反応を整理していくことがあります。
治療は、「弱い人が受けるもの」ではありません。
心と身体が限界に近づいているときに、これ以上悪化させないための手段です。
受診を考えてもよいサイン
PTSDの定義に当てはまらないから気のせいだろう、考えすぎだ、そんな事はありません。
次のような状態が続く場合は、一度相談を検討してもよいかもしれません。
過去の出来事を急に思い出し、気分や身体が強く反応する。
怖い夢や悪夢が続く。
眠れない、途中で目が覚める。
似た場面や人を避けるようになった。
仕事、学校、家事、人間関係に支障が出ている。
動悸、吐き気、頭痛、胃痛、発汗、過呼吸のような身体症状が出る。
気分の落ち込みや涙もろさが続く。
イライラしやすくなったり、些細な刺激に強く驚いたりする。
一人でいるとつらい記憶が浮かび、安心できない。
「自分が悪かった」「自分には価値がない」と考え続けてしまう。
症状が改善しない場合や日常生活に影響し始めた場合には専門家の支援を求めることが重要であり、フラッシュバック、悪夢、睡眠困難、回避、孤立、動悸や発汗などの身体反応が相談の目安になり得るとしています。
特に、自分を傷つけたい気持ちがある、消えてしまいたい気持ちが強い、日常生活が保てない、強い不眠が続く、飲酒や薬の量が増えている、といった場合には、早めに医療機関や相談窓口につながることが大切です。
「話せるか分からない」状態でも、相談して大丈夫です
トラウマに関する相談というと、「過去の出来事を全部話さなければならない」と思う方がいます。
しかし、最初から詳しく話す必要はありません。
「話そうとすると涙が出る」
「何から話せばいいか分からない」
「記憶があいまいで説明できない」
「出来事そのものより、今の生活がつらい」
そのような状態でも相談できます。
初診では、出来事の詳細を無理に掘り下げるよりも、現在困っている症状、生活への影響、睡眠、食事、仕事や学校、人間関係、安全の確保などを確認することが多くあります。
必要なのは、過去を完璧に説明することではありません。
今、何に困っているのか。
どの場面でつらさが強くなるのか。
これからどう生活を取り戻していきたいのか。
そこから一緒に整理していくことができます。
まとめ:診断名よりも、「今、困っていること」が大切です
トラウマという言葉には、PTSDの診断に関わる狭い意味のトラウマと、心や身体に深く残った傷つき体験を含む広い意味のトラウマがあります。
PTSDでは、命の危険や重傷、性的暴力などに関わる体験のあと、フラッシュバック、悪夢、回避、過覚醒、気分や考え方の変化などが続き、生活に支障が出ることがあります。
一方で、PTSDと診断されない場合でも、過去のストレス体験が現在の不安、落ち込み、不眠、対人関係の困難、適応障害などとして現れることがあります。
「PTSDではないから大丈夫」と考える必要はありません。
「診断名がつくほどではないから我慢しなければ」と思う必要もありません。
大切なのは、今の生活にどのような支障が出ているかです。
過去のつらい出来事がふとした瞬間によみがえる。
同じような場面を避け続けている。
眠れない。
人に会うのが怖い。
仕事や学校に行けない。
気分の落ち込みや不安が続いている。
そのような状態があるときは、一人で抱え込まず、精神科・心療内科などの専門機関に相談してみてください。診断名を決めるためだけでなく、今のつらさを整理し、生活を取り戻すための方法を一緒に考えることができます。
「昔のことだから」
「PTSDと診断されたわけではないから」
「自分よりもっと大変な経験をした人もいるから」
そう考えて我慢しているうちに、不安、不眠、気分の落ち込み、集中力の低下、仕事や学業への影響、対人関係のストレス、特定の場所や人を避ける行動につながることがあります。
特に、過去の出来事を思い出してつらくなる状態が続く場合や、似た場面で強い不安や身体反応が出る場合は、一度相談することが大切です。
「PTSDなのか分からない」
「トラウマと言っていいのか分からない」
「昔のことなのに、急に思い出して苦しくなる」
「フラッシュバックのような体験がある」
「過去の出来事のあとから、不安や落ち込みが続いている」
「適応障害やうつ、不眠も関係しているかもしれない」
このような方は、一人で抱え込まず、てらすクリニックにっぽりにご相談ください。
過去の出来事と現在のつらさを整理することは、こころと体の調子を整える第一歩です。
てらすクリニックにっぽりでは、精神科・心療内科の医師が、フラッシュバックのような体験、不安、不眠、気分の落ち込み、仕事や学校への行きづらさ、人間関係のストレスなどについて診療を行っています。
トラウマには、PTSDの診断基準に関わるような「狭い意味のトラウマ」と、診断名だけでは説明しきれない「広い意味のトラウマ」があります。
狭い意味のトラウマとは、生命の危険、重傷、性的暴力などに関わる出来事を指します。こうした体験のあとに、つらい記憶が突然よみがえる、悪夢を見る、似た場面を避ける、常に緊張している、眠れないといった症状が続き、生活に支障が出る場合、PTSDとして診断されることがあります。
一方で、PTSDの診断基準をすべて満たさなくても、過去の傷つき体験が現在の生活に影響することがあります。
たとえば、強い叱責、いじめ、ハラスメント、家庭内の不和、否定され続けた経験、突然の別れ、長期間の孤立などが、その人にとって深い傷つきとして残ることがあります。
このような広い意味のトラウマでは、PTSDと診断されない場合でも、フラッシュバックのように記憶や感情がよみがえる、似た場面で身体が固まる、動悸や吐き気が出る、人に会うのが怖くなる、気分の落ち込みや不安が続くといった反応がみられることがあります。
また、広い意味のトラウマは、適応障害、うつ状態、不安症状、不眠、身体症状、パニックのような症状などとして現れることもあります。
「過去のことを思い出すと苦しくなる」
「頭では大丈夫だと分かっているのに、身体が反応してしまう」
「特定の場所、人、声、表情が怖い」
「仕事や学校に行こうとすると、動悸や吐き気が出る」
「眠れない、途中で目が覚める」
「気分の落ち込みや不安が続いている」
「人間関係を避けるようになった」
「自分を責める考えが止まらない」
「適応障害かもしれないと感じている」
「PTSDではないと言われたが、つらさは残っている」
このような症状でお困りの方は、てらすクリニックにっぽりへの受診をご検討ください。
診療では、まず現在の症状や生活への影響を確認します。過去の出来事を最初から詳しく話す必要はありません。
「話そうとすると涙が出る」
「何から話せばいいか分からない」
「トラウマと言ってよいのか分からない」
「出来事そのものより、今の生活がつらい」
このような状態でも相談できます。
治療では、現在困っている症状を整理し、不眠、不安、気分の落ち込み、適応障害、うつ状態、PTSD症状などの可能性を確認します。そのうえで、必要に応じて薬物療法、生活リズムの調整、休職や環境調整の相談、心理的なサポートなどを検討します。
場合により専門的なトラウマ治療や心理療法、より詳しい評価が必要と考えられる場合には、、必要に応じて対応可能な医療機関や相談機関へのご案内をさせていただくこともございます。
JR日暮里駅から徒歩1分、WEB予約は24時間受付可能です。
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過去の出来事が急によみがえる、フラッシュバックのような体験がある、PTSDかもしれない、適応障害やうつ、不安、不眠が関係しているかもしれないと感じている方は、一人で抱え込まずご相談ください。
※所要時間は目安です。時間帯・列車種別・運行状況により異なる場合があります。
監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニック・産業医として勤務
当院の分院であるてらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)
産業医やケアマネジャーとしても働きつつ、働く皆様や高齢者のお力になりたいと考えています。