【論文紹介】テトリスがPTSDのつらい記憶を減らす?
今回はテトリスがPTSDのつらい記憶を軽減する可能性がある事を研究した論文が出ましたのでご紹介いたします。
The Lancet Psychiatry という専門誌に2026年3月に発表された論文でタイトルは以下の通りです。
コロナ禍でトラウマを負った医療従事者にテトリスを使うことでトラウマの軽減につながるかどうかを研究した論文です。
A digital imagery-competing task intervention for stopping intrusive memories in trauma-exposed health-care staff during the COVID-19 pandemic in the UK: a Bayesian adaptive randomised clinical trial
(「英国のCOVID-19パンデミック下において、トラウマに曝露された医療従事者の侵入記憶(フラッシュバック)を抑制するための、デジタル版イメージ競合課題による介入:ベイズ流アダプティブ・ランダム化比較試験)
新しい研究から考えるPTSDの治療
つらい出来事を経験したあと、その場面が急に頭に浮かんできたり、夢に出てきたりすることがあります。
たとえば、事故、災害、暴力、命の危険を感じるような出来事、医療現場でのつらい経験などです。時間がたっても、その記憶が急によみがえり、強い不安や恐怖が続くことがあります。
このような状態が長く続き、日常生活に支障が出ている場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ばれることがあります。
PTSDではどんな症状が出る?
PTSDでは、次のような症状がみられることがあります。
つらい場面が急に頭に浮かぶ。
悪夢を見る。
思い出すような場所や話題を避ける。
眠れない。
小さな音にもびくっとする。
不安や緊張が続く。
イライラしやすくなる。
気分が落ち込む。
自分を責めてしまう。
PTSDは「気持ちが弱いから起こるもの」ではありません。強いストレス体験のあとに、こころと体が危険に反応し続けている状態です。国立精神・神経医療研究センターの説明でも、PTSDではフラッシュバックや悪夢、不安、緊張などが生じることが説明されています。
PTSDの一般的な治療
PTSDの治療には、主に薬による治療と心理療法・カウンセリングがあります。
薬物療法では、不安、落ち込み、不眠、緊張などの症状に合わせて薬を使うことがあります。PTSDに対しては、SSRIと呼ばれる抗うつ薬が使われることがあります。日本では、セルトラリンやパロキセチンなどがPTSDの治療薬として挙げられています。薬は効果や副作用をみながら調整するため、自己判断で中止せず、医師と相談しながら続けることが大切です。
心理療法では、トラウマ体験に少しずつ向き合いながら、記憶や感情を整理していく治療が行われます。認知行動療法、持続エクスポージャー療法、EMDRなどが知られています。国立精神・神経医療研究センターでも、トラウマに焦点を当てた心理療法と薬物療法の両方がPTSD治療に有効であると紹介されています。
今回の論文:テトリスを使った研究
今回ご紹介する論文では、PTSDに関係する「つらい記憶が勝手によみがえる症状」に注目しています。
研究の対象は、COVID-19流行期に医療現場でつらい体験をした英国の医療従事者99人でした。参加者は、次の3つのグループに分けられました。
1つ目は、つらい記憶を少し思い出したあとにテトリスを行うグループ。
2つ目は、音楽を聴くグループ。
3つ目は、通常の治療を続けるグループです。
ここで大切なのは、ただテトリスで遊んだだけではないという点です。研究では、つらい記憶を短く思い出したあとに、テトリスのような視覚的な課題を行いました。これによって、つらい映像記憶が頭に残りにくくなる可能性を調べたのです。
結果はどうだった?
4週間後、テトリスを使ったグループでは、つらい記憶が勝手によみがえる回数が少なくなっていました。
さらに、24週間後には、テトリスを使ったグループの約70%で、つらい記憶が勝手によみがえる症状がゼロになったと報告されています。一方で、音楽を聴いたグループや通常治療のグループでは、その割合はより低い結果でした。
この研究では、テトリスを使った方法による大きな有害性は確認されなかったとされています。ただし、記録をつけること自体を負担に感じた人もいました。
では、PTSDの人はテトリスをすればよいの?
ここは注意が必要です。
今回の研究はとても興味深いものですが、「PTSDにはテトリスをすれば治る」という意味ではありません。
研究で行われたのは、決められた手順に沿った専門的な介入です。また、対象となった人は英国の医療従事者であり、すべてのPTSDの方に同じ効果があるとは限りません。
ただ、つらい映像記憶が急に浮かぶ症状に対して、ゲームのような身近な方法が役立つ可能性を示した点で、とても興味深い論文です。
PTSDでお困りの方へ
PTSDは、我慢していれば必ずよくなるものとは限りません。
つらい記憶、悪夢、不眠、不安、緊張、気分の落ち込みなどが続いている場合は、早めに相談することが大切です。
当院では、PTSDやトラウマに関連した症状について、現在の症状、睡眠の状態、生活への影響などを丁寧に確認しながら、患者さまに合った治療を一緒に考えていきます。
今回のテトリスを使った研究は、PTSD治療の新しい可能性を示す興味深い論文です。
ただし、すべての方にそのまま当てはまる治療ではありません。
PTSDの治療は、一人ひとりの状態に合わせて行うことが大切です。つらい記憶や不安で日常生活に支障がある方は、一人で抱え込まず、当院までご相談ください。
※Tetris®はTetris Holdingの商標です。本記事は、医学論文の内容を紹介するものであり、Tetris HoldingまたはThe Tetris Companyとの提携・推奨を示すものではありません。
PTSDの症状でつらい方に
その症状が長く続くことで、仕事や学校、家事、人間関係に影響が出てしまうこともあります。
また、「自分が弱いからだ」「早く忘れなければ」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
しかし、PTSDは気持ちの弱さではありません。
強いストレス体験のあとに、こころと体が危険に反応し続けている状態です。
今回ご紹介した論文では、つらい記憶が勝手によみがえる症状に対して、落ちものパズルゲームのような視覚的な課題を用いた方法が検討されました。結果として、つらい記憶がよみがえる回数が減ったことが報告されており、とても興味深い研究です。
ただし、この研究の方法がすべてのPTSDの方にそのまま当てはまるわけではありません。
PTSDの治療では、症状の内容、生活への影響、睡眠の状態、不安や抑うつの有無、これまでの体験などを丁寧に確認しながら、その方に合った治療を考えていくことが大切です。
てらすクリニックにっぽりでは、PTSDやトラウマに関連した症状について、問診を通じて現在の状態を丁寧に確認し、必要に応じて薬物療法、精神療法・カウンセリング、専門機関との連携などを検討してまいります。
「フラッシュバックがある」
「つらい記憶が急に浮かぶ」
「悪夢が続く」
「眠れない」
「人混みや特定の場所を避けてしまう」
「気持ちが落ち込む」
「仕事や日常生活に支障が出ている」
このような症状がある方は、一人で抱え込まずご相談ください。
てらすクリニックにっぽりでは、土日や平日夜も開院しております。お仕事や学校のあとでも、通院を継続しやすい体制を整えています。
JR日暮里駅から徒歩1分、WEB予約は24時間受付可能です。
駅からすぐのため、日暮里周辺にお住まいの方はもちろん、都内に限らず千葉県や茨城県方面から通勤・通学されている方もご検討ください。
リンクからお気軽にご予約ください。
沿線主要駅から日暮里駅までのアクセス目安
当院は日暮里駅から徒歩1分の場所にあり、JR常磐線・山手線・京浜東北線、京成線、日暮里・舎人ライナーをご利用の方にも通いやすい立地です。
北千住・松戸・柏方面、青砥・京成高砂方面など、沿線エリアからも無理なくご来院いただけます。
| 駅 | 日暮里駅までの目安 |
|---|---|
| 北千住駅 | 約6〜8分 |
| 松戸駅 | 約16分 |
| 柏駅 | 約25〜32分 |
| 南千住駅 | 約5分 |
| 青砥駅 | 約9〜14分 |
| 京成高砂駅 | 約12〜17分 |
通勤・通学の前後や、お仕事帰りにも立ち寄りやすく、継続的な通院にも便利です。
日暮里周辺にお住まいの方はもちろん、常磐線・京成線沿線にお住まいの方もお気軽にご相談ください。
※所要時間は目安です。時間帯・列車種別・運行状況により異なる場合があります。
監修者情報
東京医科歯科大学医学部医学科卒業(現・東京科学大学)
地方中核病院やメンタルクリニック・訪問診療クリニック・産業医として勤務
当院の分院であるてらすクリニックひきふね 院長
(内科・心療内科・精神科・訪問診療)
産業医やケアマネジャーとしても働きつつ、働く皆様や高齢者のお力になりたいと考えています。