
パニック障害とは、特にきっかけがないにもかかわらず、激しい動悸や呼吸困難(パニック発作)を繰り返し、そのために日常生活に支障をきたす疾患です。
生涯のうちに100人に約1〜4人が経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。 当院では心療内科だけでなく内科も併設しているため、身体的な不安にも配慮しながら診療を行っています。
パニック障害は、主に以下の3つの症状が連鎖することで進行していきます。
激しい動悸、息苦しさ、めまい、冷や汗、手足の震えなどが突然起こります。通常は10分〜数十分で収まりますが、本人は「死んでしまうかもしれない」と感じるほど強烈です。
一度発作を経験すると、「またあの苦しさが来るのではないか」という強い不安を常に感じるようになります。
「発作が起きた時に逃げ出せない場所」や「助けを求められない場所」を避けるようになります。
例:電車、バス、高速道路、エレベーター、美容院、人混みなど
単に「心が弱いから」「ストレスに弱いから」というわけではありません。
直接的な原因と必ずしも言えないこともありますが、広場や閉所、人混み、むわっとした空気など初めてパニック発作が起こった際のきっかけを原因として解釈される方もいらっしゃいます。
最新の研究では、脳内の神経伝達物質(セロトニン等)のバランスが崩れることがその一因だと考えられています。何も起きていないのに、脳が「命の危険がある!」と過剰なサインを出してしまい、それに反応してパニック発作が生じて心拍数や呼吸が乱れてしまうのです。
パニック障害の診断において最も重要なのは、経過の詳細な問診と内科疾患の否定です。
パニック発作の症状(動悸、息苦しさ、めまいなど)は、心臓や甲状腺、呼吸器の病気と非常によく似ています。 心療内科・精神科の疾患として治療を始める前に体の病気であることをまずは確認するのが基本です。
当法人では、内科専門医も所属しております。必要に応じて診察と、以下のような検査を行い、身体的な異常がないかを確認します。
血液検査: 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や貧血、低血糖などがないかを調べます。場合によっては更年期障害のための検査も行うことがあります。
心電図など理学的検査: 不整脈や心疾患の可能性を検討します。
※すでに他の内科で検査を受け、異常がないと言われた方は、その旨をお伝えください。
身体に異常がないことを確認した上で、以下のような「パニック障害に特徴的な傾向」があるかを経験豊富な医師が問診をする中で診断します。
問診例)
パニック障害は、うつ病や全般不安障害などを併発しやすいという特徴があります。患者さんのお話を丁寧に伺い、パニック症状の背景に他の心の不調が隠れていないかを見極め、パニック障害のみならずお一人お一人に応じた治療方針を立てていきます。
薬物療法と精神療法を組み合わせて行います。
薬物療法は主に2点で①パニック発作が起きた時の治療 ②パニック発作を起きないようにする治療を組み合わせます。
抗不安薬と呼ばれるお薬を使用することで、不安感を和らげ苦痛を軽減します。
しかし、こちらのお薬だけでコントロールを試みることは少ないです。
SSRIと呼ばれるお薬を使用することで、発作を抑制します。SSRIというお薬は抗うつ薬と呼ばれることもあり、脳内のセロトニン濃度を上昇させることで発作を抑制します。
基本的には②のお薬だけで発作が殆ど起きず、予期不安が少なく生活できる状態が理想です。
他に症状に応じた漢方薬等も処方することも行っております。特に薬物療法に抵抗感がある場合に漢方薬のみで治療を検討することもしております。(病状に応じてであり必ず可能なわけではありません)
少しずつ自信を取り戻すサポート お薬で発作が落ち着いてきたら、避けていた場所に少しずつ慣れていく練習を提案します。無理をせず、自分のペースで「もう大丈夫」という自信を積み重ねていきます。
精神療法については以下のように認知行動療法(CBT)を基本にしたアプローチを行っております。
パニック発作が起きると「このまま死んでしまう」「気が狂ってしまう」といった極端な恐怖に襲われます。
正しい知識の習得: 「発作で死ぬことはない」「数分から数十分で必ず収まる」といった医学的事実を深く理解することで、パニック時の恐怖心を和らげます。
誤解の修正: 身体のわずかな変化(少しの動悸やめまい)を「発作の前触れだ!」と過剰に捉えてしまう癖を、少しずつ緩めていきます。
不安のあまり避けていた場所や状況に、無理のない範囲で段階的に慣れていく練習です。
小さな成功体験: 「各駅停車なら一駅乗れた」「スーパーの入り口まで行けた」といった小さな自信を積み重ね、脳の誤作動を「ここは安全なんだ」と書き換えていきます。
回避の解消: 避けることで一時的に安心する「回避行動」を減らしていくことが、結果として予期不安を解消する近道となります。
発作が起きそうになった時に、自分で心身を落ち着かせる「武器」を身につけます。
腹式呼吸: 呼吸を整えることで、過呼吸を防ぎ、副交感神経を優位にします。
筋弛緩法: 体の筋肉の緊張を意図的に解く方法を学びます。
治療と並行して、以下のことに気をつけるだけで症状が安定しやすくなります。
カフェイン(コーヒー、エナジードリンク)やニコチンは、心拍数を上げて発作を誘発しやすいため、治療中は控えることをお勧めします。
睡眠不足は脳の不安定さを招きます。
仕事やプライベートのストレスをなるべく軽減することもその一助です。当院では症状が重たく労務困難な場合や、運転業務等があり労務が危険な場合等の診断書記載も行っております。お困りの皆様のため診断書は当日記載を原則としております。
パニック障害は、動悸がひどいから循環器内科か呼吸器内科だろうと考えてドクターショッピングされている方も多いです。パニック障害は心の弱さや甘えでも何でもなく、れっきとした心の病気(不調)です。パニック発作を我慢して耐えるよりはまずは一刻も早く症状の軽減をして少しでも楽になり、ワンステップを踏み出すことが重要だと考えています。
早く治療を始めるほど、生活への制限(広場恐怖)が定着する前の改善も見込まれやすいと言われています。「こんなことで受診してもいいのかな」と迷わず、ぜひお気軽にご相談ください。土日も診療を行っておりますので、お仕事がお忙しい方も継続して通院いただけます。