
不眠症とは、寝付けない、途中で頻繁に目が覚める、朝早く目が覚める、ぐっすり眠れた気がしないなど、眠りに関するトラブルが1か月以上続き、日中にだるさ、やる気が出ない、集中できないなどの不調が出現する状態です。
「なかなか寝付けない」「夜中や早朝に目が覚める」「眠っても疲れが取れない」。このような状態は誰でも経験するため、特に病気という訳ではありません。誰でも「眠ろうとしても眠れない」という経験があると思いますが、通常は数日のうちにまた眠れるようになります。
しかし、十分な睡眠が取れない状態が長期間続くと、上手く体調を整えることができなくなり、気持ちが落ち込んだり、ぼうっとして頭が働かなくなったり、集中しなくてはいけない場面で眠気が出たりし、日常生活に支障を来たすことがあります。
日本人の5人に1人は眠りに関して問題を抱えていると言われています。日本の就業年齢の約4割が睡眠時間6時間未満で、4人に1人が夜勤勤務を含む就労に従事しています。不眠症の背景には、人口の高齢化、ライフスタイルの多様化、生活リズムの乱れ、ストレスなどが考えられます。
私たちの生活に欠かせない睡眠には、多くの重要な役割があります。睡眠中に分泌される成長ホルモンによって、心と体をリラックスさせ、疲れをとり、傷んだ部分を回復します。また昼間の情報を整理して、記憶として脳に定着させるのです。また寝ている間に、脳にたまった老廃物の除去もしているのではないかと言われています。
睡眠の質が下がったり、睡眠不足の状態が続くと、太りやすくなったり、高血圧、糖尿病など生活習慣病のリスクが上がります。学習や仕事の能率も低下します。また認知症のリスクが上がると言われています。うつ病の発症のリスクともなります。
不眠症によって日中のだるさや集中力の低下などが引き起こされると、日々の生活に支障をきたし、極端な場合にはさまざまな事故につながることもあります。そのため、不眠症は放置せず、適切に対処することが重要です。
不眠症には、主に4つのタイプがあります。どれも「眠れなくて日常生活に支障を来たす」という点では同じですが、有効な薬物の種類が変わるため、どのような不眠の悩みを抱えているかを確認する必要があります。睡眠リズムそのものの乱れにより、さまざまな睡眠の問題が重複して現れることもあります。
寝つきが悪く、ベッドに入ってからすぐに眠ることができません。床に入ってからなかなか寝つけない状態です。入眠障害は、不眠症の中でも一番よく見られます。
寝つきは良いのに寝ている途中で目が覚めてしまうタイプです。途中で何度も目が覚め、再び眠るのに時間がかかります。
朝早くに目が覚めてしまい、寝足りないと感じる状態です。明け方に目が覚めてしまいます。
時間的には眠れているものの、緊張などで眠りが浅く休めたと感じられない状態です。いくら寝ても熟眠感が得られません。十分寝た感じがしません。
①寝るために問題のない寝室環境に居るにもかかわらず、②上記の種類のどれかの不眠を認め、③昼間の仕事や学業、家事などに支障が出ていることで、「不眠症」と診断されます。
不眠症の原因は多岐にわたります。不眠が続くと、眠れないことへの不安が強くなって、「今日こそ寝なくては」と緊張して構えてしまったりして、不眠が悪化するという悪循環に陥ることがあります。
急性不眠症の原因は5つのPと言われています。
糖尿病、高血圧、心臓病や更年期などによるホルモンバランスの変化、腎臓疾患などによる頻尿、アトピー性皮膚炎などによる痒みを伴う皮膚疾患、関節リウマチ、痛み、かゆみ、発熱、喘息など、さまざまな身体疾患が要因となり、不眠症を引き起こすことがあります。この場合は、身体疾患の治療が必要になります。
時差ぼけ、シフト勤務による身体リズムと環境のずれ、加齢によるものなどがあります。
心理的要因として多く挙げられるのがストレスや緊張です。心配事、不安、イライラ、人間関係の悩み、仕事の問題などが、睡眠の質を低下させます。神経質な人や緊張をしやすい人は、不眠症になりやすい傾向があります。
うつ病、統合失調症、不安症などの精神疾患が原因となることがあります。
アルコール、カフェイン、喘息治療薬(テオフィリン)、降圧薬など、服用している薬の影響で不眠が生じることがあります。
昼夜逆転してしまう生活リズムの乱れ、季節の変わり目、子供の誕生、引っ越しによる環境の変化、金銭的問題、転職、死別、合わないベッド・布団・まくら、騒音のある寝室、騒音、光、温度など不適切な寝室環境などが原因となることがあります。
喫煙によるニコチン摂取、お酒の飲み過ぎ、コーヒーの飲み過ぎなどによるカフェイン摂取過多、お薬の副作用、入眠前の過剰なネットの利用やスマートフォンの操作などの生活習慣が原因になることがあります。
不眠症の治療は、その原因により治療法も変わってきますが、生活習慣の改善と薬物療法が中心になります。不眠症の治療は疾患によって異なっており、睡眠薬の服用だけが睡眠障害の治療ではありません。
不眠のタイプと不眠をもたらしている原因を探ります。身体疾患が原因であれば、まずはその治療、また不適切な睡眠環境などの改善に取り組むことが大切です。その上で不眠が改善されない場合は、睡眠薬などの薬物療法が適応になります。
眠りを妨げる原因を解決した上で、必要に応じて睡眠薬を使用します。
生活習慣や環境を整えることで改善する不眠には、睡眠衛生指導を行います。まずは生活の中でできる工夫をしてみましょう。丁寧に実行すればよく眠れるようになります。
夜勤などお仕事の関係で不規則な生活を送らざるを得ないこともあります。それぞれの方の実情にあった対策が取れるよう心がけることが大切です。
睡眠スケジュール法、リラクセーションを学び、実践、評価します。
「また今夜も眠れないのではないか」とつい考えてしまうことで、全身が緊張して逆に目がさえてしまいます。無理に寝ようとすると不眠を悪化させてしまいます。眠れなければ、「遅寝早起き」をしてみましょう。
不眠のタイプに合った睡眠薬を処方します。それぞれのタイプに合った睡眠薬を処方し、治療を行います。
日常生活の過ごし方などを問診して、寝つきが悪い、熟睡できないなど不眠のタイプを見極め、それぞれの症状に合った睡眠薬をお勧めします。一つの薬で快適な眠りが得られなかったら、量を変更したり、別の薬を試してみたりするなど、きめ細かく調整してぴったりと合うものを探していきます。
通常、不眠症には睡眠薬を用いることが多いですが、それぞれの方の症状にあわせて抗うつ薬や抗不安薬、抗精神病薬を使用することもあります。
睡眠薬は一度使い始めると手放せなくなり、次第に量が増えていくので怖いと思っている方もいらっしゃいますが、最近の睡眠薬にはそういう心配はありません。不安や緊張・興奮をやわらげて眠りに導くので自然に近い眠りが得られ、副作用も少なく安心して使えます。
また、薬の副作用を心配するより、気持ちよく眠って翌日を快適に過ごすことの方がメリットが多いと考えられています。
睡眠は本当に日常の一部であるため、薬を使うことに後ろめたさを感じたり、それがないと眠れなくなることに不安を感じられる方もおられます。それぞれの方のお気持ちを確認し、必要最小限の薬物治療を行っていくことが大切です。
不眠症状の改善と日常生活の質の向上が得られた後は、減量や中止を検討します。
不眠を長期化させると、慢性不眠に移行し、睡眠薬の多剤併用、過剰投与による転倒や過鎮静、事故、精神症状悪化をもたらすこともあります。こじらせる前に適切な治療を受けることをお勧めします。
日常的な対処で改善しないときは、こんな小さなことで、と思わずに早めにご相談においでください。深刻な影響が出る前に医療機関へご相談ください。
不眠症は放置せず、専門家へ相談することが大切です。適切な治療と生活習慣の改善によって、多くの場合、改善が期待できます。快適な一日を過ごすために安心してご相談ください。